債務整理コラム

2023/05/12 債務整理コラム

大阪に住んでいるということと個人再生手続

あなたが東京でなく大阪に住んでいるとすれば、そのことは、個人再生手続を利用することとの関係では、利点があります。
というのも、東京地裁では、個人再生手続において原則として全件、個人再生委員を選任する運用であるのに対し、大阪地裁では、弁護士が代理人に就いている場合には、原則として個人再生委員を選任しない運用をしているからです。

個人再生委員が選任される場合、申立人は、その報酬に充てる費用を裁判所に予納する必要があります。
したがって、個人再生を申し立てる裁判所が大阪地裁である場合、それが東京地裁である場合に比べて、個人再生委員の報酬分について、費用が少なくて済むというメリットがある、といえます。

個人再生委員の報酬額は、東京地裁の場合、通常、15万円とされているようです。
「たかが15万か」と思われるかも知れませんが、多額の借入れを負い、その月々の支払いのために、やり繰りに苦労し、個人再生の申立てを検討するまでに追い詰められた状況の下では決して馬鹿にできる金額ではないでしょう。

ところで、個人再生手続を申し立てる裁判所は地方裁判所ですが、どの地方裁判所になるか(土地管轄)は民事再生法5条1項に規定されています。
それによると、原則的な土地管轄は、債務者が営業者か否かにより次のように定められています。
a)営業者であるとき:主たる営業所の所在地を管轄する裁判所
b)営業者でないとき:「普通裁判籍」の所在地を管轄する裁判所

民事再生法5条1項

(民事再生法5条1項)

「普通裁判籍」については、民事訴訟法4条に規定があり、人の普通裁判籍は、原則として、その住所にあるとされています。

民事訴訟法4条

(民事訴訟法4条1、2項)

要するに、原則として、営業者であれば主たる営業所の所在地、営業者でなければ住所、をそれぞれ管轄する地方裁判所が管轄裁判所となります。

すなわち、あなたが個人再生手続を申し立てる裁判所が大阪地方裁判所(本庁又は支部)となるのは、あなたが個人事業を営んでいないサラリーマン等の消費者であるなら、その住所が大阪府内にある場合(あなたが個人事業を営んでいれば、その(主たる)営業所が大阪府内にある場合)であるということです。

したがって、あなたが消費者であって大阪に住んでいるということ、又は個人事業主であって大阪に営業所を構えているということは、東京に居住等している場合に比べてより少ない費用で個人再生手続を利用できる可能性がある、という点で、「幸運」といえる面があります。

だから「個人再生を申し立てるときに備えて大阪に転居すべきだ」とは言いませんが(笑※)、大阪にお住まいの消費者の皆さん、大阪で事業を営む個人事業主の皆さんには、債務の支払いに窮した場合、上述の「幸運」を利用すべく、個人再生手続の利用を積極的に検討されるよう、よりお勧めしたいところです。

(※ 少々、疑問のある大阪地裁独自の「運用」もあります。…免除率の算出方法-大阪地裁”ルール”