債務整理コラム

2022/04/23 債務整理コラム

家計収支の余裕と逼迫と、ときにその両方を論じることについて

個人再生の再生計画案が適正なものか否かを裁判所が審査するときに、とくに慎重に検討されるのが、再生債務者の家計収支に照らして再生計画を遂行する見込みの有無についてです。この見込みが無いと裁判所が判断すれば、たとえ再生計画案が可決されたとしても再生計画は認可されませんし、そもそも再生計画案を債権者の書面決議に付する決定を出してもらえません。

個人再生の再生計画案が適正なものか否かを裁判所が審査するときに、とくに慎重に検討されるのが、再生債務者の家計収支に照らして再生計画を遂行する見込みの有無についてです。この見込みが無いと裁判所が判断すれば、たとえ再生計画案が可決されたとしても再生計画は認可されませんし、そもそも再生計画案を債権者の書面決議に付する決定を出してもらえません。

そこで、代理人としては、依頼者の毎月の家計収支に余裕が無い場合等には、賞与を含めた年間の収支を説明するなどして、再生計画を遂行する見込みがあることの論証に努めることになります。

ところが、逆に依頼者の家計収支に余裕が無いことを一生懸命論証する、というケースもあります。それは、弁済期間を3年を超えた期間とした再生計画案を提出した場合のことです。弁済期間は3年とするのが原則ですが、「特別の事情」がある場合には、3年を超えて5年以下の範囲内とすることができます(民事再生法229条2項2号、244条)。

この「特別の事情」は、要するに「3年では最低弁済額以上の弁済は困難である(が、3年超5年以下の○年とすれば可能である」ことを意味します。
そこで、「3年では無理だ」(が、○年なら可能だ)ということについて、依頼者の家計収支から論証することが必要となります。その際には、現在は支出していないが、近い将来に必要となると見込まれる支出などを説明に加えることもあります。

「3年では無理だが、4年なら可能だ」などということを、本当は将来のことですから必ずしも確度の高い話ではありませんが、依頼者の意向を踏まえつつ、家計収支の実態に基づいて説得的に書面に書くこと…この辺りが個人再生を受任した弁護士にとって腕の見せ所といってよいのかも知れません。