債務整理コラム

2023/10/09 債務整理コラム

「疚しいこと」と個人再生手続き利用の可否

多重債務を抱えた方の中には、借金を重ねた経緯に何らかの「疚しいこと」がある方もいらっしゃるでしょう。借金のほとんどをギャンブルに費やしてしまったような場合が一つの典型ですね。そういう方の場合、経緯をお尋ねすると、言葉を濁し、奥歯に物が挟まったような話し方になることがあります。

しかし、個人再生手続きに関する限り、借金をした原因の性質は、ほとんど全く問題になりません。破産手続きであれば、借金の原因がギャンブルのような浪費であれば、免責不許可事由に該当し、免責を受けられないことが少なくとも可能性としてありますが、個人再生では、免責の許可・不許可の決定という制度自体がありません。したがって、多重債務を負った原因がどのような事情によるものかについて、事細かに裁判所に報告することも通常は求められません。

そのことを象徴的に示しているのが、大阪地裁で用いられている申立書類中の申立に至った経緯を記す箇所です。
破産の申立書類では1頁にわたって具体的事情を記載することになっていますが、個人再生の申立書類では、わずか15行ほどが設けられているだけです。

破産申立書類

(↑大阪地裁の破産申立て書式から)

個人再生・具体的事情

(↑大阪地裁の個人再生申立書式から)

 

この個人再生申立書の具体的事情欄に、多額の債務を負うに至った経緯の記載が求められる理由は何でしょうか。破産と異なって免責不許可事由の存否を検討する必要はそもそもないのですから、経緯の情報など裁判所にとって必要がないのではないかという疑問が湧きそうですが、しかし、多額の借入れをしていながら、借入れがなぜ必要であったのか、何に使ったのかの説明がない場合、借りた金をどこかに貯めているのかも知れませんし、高額な資産を購入してどこかに隠匿しているのかも知れません。そうではない、ということについて確認しておきたい、というのが裁判所の意識なのでしょう。

そのため、借金はこれこれの事由によって費消しました、と一応の説明をし、内容が不自然・不合理でなく、提出する預金通帳の写し等の資料とも矛盾しないなら、裁判所から、それ以上の説明を求められることはありません。裁判所の関心事は、むしろ、再生計画を履行できる見込みの有無・程度にあります。

したがって、多重債務の返済に苦しみながら、「借金の原因は浪費だから」という理由で裁判所での手続きの利用は無理ではないかと悩んでいる方がいるとすれば、その心配は少なくとも個人再生に関する限り、杞憂です。自分で「無理」と判断してしまわずに専門家に相談なさってください。

なお、浪費の事実が個人再生手続において何らかの意味を持つことが全くあり得ないというわけではありません。たとえば、弁護士に個人再生の手続きを依頼した後にもギャンブルを続け、財産を減らしていたような場合であれば、「申立てが誠実にされたものでない」(民事再生法25条4号)とみなされて個人再生の申立てを棄却される可能性が出てきます。弁護士への依頼を検討するような段階に至れば、以後は浪費を控えなければならないことはもちろんです。