債務整理コラム

2022/11/25 債務整理コラム

少額債権の取扱い

個人再生手続では、原則としてすべての再生債権について、同一の基準で権利の内容が変更されます。すなわち、すべての再生債権について、債権の免除率も、弁済の時期(分割弁済の方法)も、同一の取扱いとするのが原則です。
しかし、この原則を貫くと、債権額が少額の債権者に対する関係で、再生計画に基づく各回の支払額がごく少額となり、振込手数料の額さえ下回る、といった経済的に不合理な事態が生じる場合があります。

そこで、法律は、再生計画において、少額債権の弁済の時期について例外的な扱いを定めることを許容しています(民事再生法229条1項、244条)。
この規定に基づき、少額債権については、他の再生債権に対する弁済よりも少ない回数・短い期間で支払いを終える計画とすることが可能です。

少額債権の定めの対象とすることができる債権の範囲について法令には規定がありません。大阪地裁の運用では、少額債権の定めを設けないと1か月あたりの弁済額が1000円に満たない額となる債権について、対象とすることが認められています。「1回あたり」ではなく、「1か月あたり」ですので、12回払い(3か月に1回の弁済)とする場合には、1回あたりの額が3000円に満たない額となる場合であることになります。

そして、少額債権の定めでは、その対象となる債権について、たとえば、認可決定確定日の属する月の翌月に再生計画に基づく弁済総額の全額を1回払いで支払う、といったことを定めることになります。
もちろん、1回払いとはせず、原則的な弁済方法(たとえば36回払い)よりも短い回数の分割払い(たとえば12回払い)を定めることも可能です。

この点、1回払いとしてしまうと、原則的な弁済方法が適用される他の債権についての第1回の弁済額を相当程度上回ってしまうことがありえます。債権者間の平等を図る観点からは、そうなることを避け、少額債権の定めに基づく弁済額が、他の再生債権者に対する1回の弁済額を上回ることがないように少額債権の定めを設けるという配慮も考えられるところです。

しかし、裁判所は、あまりその点は気にしていないようで、少額債権の定めとして複数回の分割弁済を記載した再生計画案を提出したところ、1回払いにするよう促されたことがあります。
債権者間の平等の観点からはやや問題があるとしても、そもそも少額であることを理由に不平等な扱いを法律自体が認めていること、また、大阪地裁の運用のように手続進行中に積立てを行っていれば、初回の弁済額が少々多額となっても支払いに問題はなく、第2回以降は毎回、少額債権以外の債権者のみへの支払いとなって支払額の間違いが生じにくいと考えられること、などを踏まえれば、1回払いとすることで差し支えないというべきなのかも知れません。